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桐野夏生『残虐記』

いろいろ一段落したので読書をしたくなった。まずは慣れ親しんだ桐野夏生の小説から。
相変わらず面白い。桐野夏生の小説の何が面白いかといえばやはり(前にも書いたけど)物語のずらし方だろう。彼女はどこかで聞いたような物語には満足しない。僕の敬愛する中原昌也氏が誰かとの対談で言っていた(以下うろ覚えの引用)「100人に聞きましたのような、あるある的な物語は許せない。ああいうものを書いて何かを語った気になるのは物語に対する冒涜である」を思い起こさせる。しかし桐野夏生の頭のいいところは入り口をちゃんと用意するところだ。例えばこの『残虐記』は新潟県で起きた引きこもりの男による少女監禁事件に着想を得ている。しかし読者は読み進めるうちに当初作品に抱いていたモデル小説的イメージとかけ離れた場所に運ばれしまう。まずこの点が彼女の小説の面白味のひとつだと思う。
ちなみに『残虐記』は僕が勝手に楽しみにしている桐野夏生のいつものパターン、ー膺邑は語りたくない過去のある中産階級の女性 ⊆膺邑は運命の男性と出会うが、男性は死もしくは社会的死を迎える に意外な形でそった話だった。そういう意味でも楽しめた。
惜しむらくは少し短かったことくらいか。いつも長編ではこれでもかと書き尽くす迫力がまた心地よいのだが『残虐記』では読者の想像に任せる部分がいつもより多い(『柔らかな頬』とはまた別の形で)。書こうと思えばもっと長く書けそうなのに何故この長さにしたのか気になるところだ。
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