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桐野夏生『柔らかな頬』

桐野夏生、三冊目。ネタばれの可能性もあるので読む人は注意してください。
これが吃驚するほど面白かった。いやホントに。
冒頭、主人公カスミの不倫のシーンから始まった時はやや心配だった。不倫モノはだいたいナルシスティックな悲劇に終始しがちで、そういう紋切り型は正直楽しめない。ところがこの作品は娘の誘拐事件が起きるあたりから物語が少しづつズレはじめる。そう、この小説はこのズレというものをとても巧みに利用しているのだ(読者の期待や物語の定型が少しづつ裏切られていく。このあたりの狡猾さは阿部和重に似ていなくもない)。その後も娘の誘拐事件の謎を追うのかと思いきや、追うことは追うのだが末期癌に侵された元警官という二人目の主人公の登場などによってここでも巧みに物語はずらされ、結局、肝心の誘拐事件の真相は明らかにならないまま終わってしまう。確かに物語の核心を明さないまま終わる小説は今までにもあった。核心を語らないことによって際立たせる、いわゆる黙説法という技法だ。ちなみに僕はこの黙説法があまり好きでない。何故なら作者だけが全てを知りうるという作者と読者との間にある権力構造をモロに利用した安易な技法といえるからだ。しかし、この作品は読了後に本来語らないことによって際立たっていなければならない事件の真相というものがほとんど気にならない。どうでもよいとさえ感じる。これはなかなか凄いことだ。よほど巧みにズレを構築しているのだと思う。もちろん作中には幾つかの真相が芥川龍之介の『藪の中』の形式で提示されていて、それがうまく作用しているのかも知れないが。
そして三冊目にしてだんだん桐野夏生のパターンがわかってきたのも楽しかった。まず主人公は中流階級の孤独な女で人には語りたくない過去がある。次に、最初は反目・敵対しあっているがのちに最良の理解者になりうる男(運命の人)が出てくる。そしてその男は最終的に死、もしくは社会的な死によって主人公の前から姿を消す。男の恋人もしくは妻として放浪型の主人公と対照的な定住型の女が出てくる。などなど。こういう風に書いてしまうとみもふたもないのだけど、今後の作品でこのパターンをどうなぞり、どう裏切ってくれるのか今から楽しみだ。
ちなみに今作「これ、最後に主人公と警官がやっちまったらちょっと駄作だな」とハラハラしながら読んだのだけれど、危ういながらも最終的に良い着地点を見つけたと思う。内海という警官を身体的な弱者(末期癌による)に設定したのは秀逸だった。この設定によりフェミニズムの観点からもマッチョな性交シーンを回避できたのだと思う。絶対的な運命の人が登場する点も含めて松浦理英子が好きになるのも頷ける。
あと主人公カスミが海や湖など水を恐れる点に言及しておきたい。そういえば『顔に降りかかる雨』において主人公の親友は水死し、霧や雨などは不吉な暗示だった。どうやら桐野作品において水は重要なキーワード、しかもあまり良い印象ではないようだ。そう考えると「内海」という名前はあまりにも意味ありげに感じる。そこにどんな作為が働いているのか今のところはわからないのだけど。
そのうちもう一度読み返してみようと思う。


さらばフェルナンジーニョ

フェルナンジーニョがガンバを退団するらしい。リーグ終盤、ベンチにも入ってないなと思っていたら完全に西野監督の構想から外れていたそうだ。チーム戦術との兼ね合いか、また監督との関係に軋轢があったのかはよくわからない。確かにボールを持ちすぎるきらいはあった。試合を観にいっても、もう少し早くパスを出せば他の選手がフリーだったのにとやきもきしたのを思い出す。
でもいつも観客を沸かせるのも彼だった。ドリブルで突っかかって一人抜き二人抜き三人目で潰される。それでもまたボールを持てば突っかかっていく。そのひたむきさが結構好きだった。ただ自分勝手なだけなのかもしれないけど。組織的なガンバのサッカーの中で個人技に走る異色の存在。
僕がサッカーを好きなのは論理を越えた個の力に時折出会えるからだ。一人で三人抜いてゴールを決めてしまうような、そんな瞬間に。彼のドリブルにはもしかしたらそんな瞬間が訪れるのではないかという予感があった。そして時々あった。時々がミソなのだけど。
さらばフェルナンジーニョ。

と思ったら宮本がオーストリアのリーグに移籍するらしい。びっくりだ。
この件についてはまた後日。


遅くなりましたがコメントレスです↓

ナタ出様
もちろん意識してますよ。でもほんと僕が若かりし頃にうろちょろしてた場所とかぶってるんですよね。いつか「くるりベストの写真の場所を巡るツアー」を企画したいところです。

カゲロー様
パラダイスですよね。昔、探偵ナイトスクープで取り上げられてました。

京都タワー

実家からの帰り道に撮った1枚。昔京都に住んでた時はあんまり好きじゃなかった京都タワー。灯篭を意識したらしい変テコなデザインと、高さを下のビルで底上げしているセコさが。
でも今はとても愛着がある。隣に立派な駅ビルが出来たからかもしれない。駅ビルは大きくて新しくて綺麗だけど、それだけだ。
京都タワーは相変わらず変テコでセコいが、それがちょっと可愛いかったり。

桐野夏生『顔に降りかかる雨』

桐野夏生、二冊目。『OUT』が面白かったのでとりあえず初期作品から読んでみようかなと。しかし正直言って少々物足りなかった。
ミステリーや探偵ものはジャンル自体の自己規定が強い。例えば語りは一人称、くどい描写はしない、時間の推移は直線的など。この作品はこれらの自己規定の枠の中に収まっているだけで枠自体を利用するところまでいっていないような気がして退屈だった。物語的にも文体的にも。もちろん作者はそんなこと百も承知であえてなのだろうけど。
あと主人公の魅力が『OUT』の雅子に遠く及ばないのも残念だった。シリーズ化されているらしいので今後に期待したい。
文句ばかりあげつらってしまった。でもこれは桐野夏生に対する期待値が高すぎる故だと思ってください。それくらいOUTはよかった。
この作品も作りはとても丁寧なので、普段あまり小説を読まない人には確かに親切かもしれないですね。

これでよし

少し前の話になるけど12月の頭に精華小劇場で観たhmpさんのお芝居『Rio.』がとても面白かった。
これでよしと思えたのは久しぶりだ。これでよしというのは、僕は同年代の人たちの創ったとても面白いお芝居に触れるとうまく言葉がみつからないけど世界が補完されたような、要するに満ち足りた気分になってしまう。同時に自分が演劇を続けている意味を考えてしまうのだ。こんなに面白い作品を創る人たちがいるのなら、もはや僕が脚本を書いたり演出をしたりする意味はないのでないか。などなど。

まあ僕はすぐ気が変わるのでまだまだ引退とかしませんけどね。逆にこういうことがあるから演劇っていいなと思えるわけで。

こめんとれす↓

しかばんびの音響様
コメントありがとうございます。
クラブワールドカップのことですよね。じつはあんまり関心ないんですよね。どちらかといえば天皇杯の方が気になります。あ、でも決勝は見ますよ。たぶん。個人的には前のトヨタ杯の形に戻してほしいんですけど。まあなにぶん新しい試みなので長い目で見守っていこうとは思っていますが。
あとはそうですね、クラブアメリカのブランコに注目したいですね。




桐野夏生『OUT』

直木賞系を読もう第二弾。これを選んだのはある人に強力に勧められたのと、文庫版の解説をあの松浦理英子が書いてるからだ。松浦理英子は僕が最も好きな小説家の一人で著作は全部読んでいる。たまらなく好きなのにとても寡作なので、たとえ解説であっても読んでみたいというのがファン心理というものだ。それに彼女が推すのだから面白くないわけがない。
そして期待にたがわず『OUT』はかなり面白かった。まず物語の構築の仕方がとても巧い。僕は小説は物語を利用するが物語そのものではないという立場をとっているので、いくら物語が面白くても文体に魅力がないとシラケることが多いのだが、ここまでやられるとあっぱれとしかいいようがない。それくらい物語るのが巧い。いや物語とは定型であってパターンが決まっているものだが、この小説の物語はやや定型を逸脱している。そういう意味でも興味深い。あと文体に変な欲がないのも好感が持てる。主人公と同じで基本ストイックだ。ただ、佐竹という男の濡れ場の描写には過剰なものを感じる。ふと中上健次の小説を思い出した。 何故だろう。

機種変

ついに携帯を買い換えた。前のやつはけっこう長く使っていて愛着もあったのだけど充電の差込口が壊れたのでやむなく。それにしてもお店ではかなり困った。携帯には何のこだわりもないのでどれにしたものか。何でもいいんだけど本当に何でもいいのか? 僕の性格からして長く使うはずなので後で後悔はしたくない。でもカタログとか読んで比較検討するのは面倒くさい。結局、無我の境地で選びました。適当に。メカフェチにはなれそうもない。

でもって画像の整理をしていたら懐かしい写真が出てきた。
中央(中身)が二年前の僕です。

Jリーグの話題

おお、Jリーグの話題に二つもコメントが。
なので早速れすします。

コメントれす↓
taichiro ito様
あれ、itoさんって桜サポでしたっけ? ご愁傷様です。
まずセレッソは外国人選手のスカウティングを何とかした方がいいですね。近年酷いですよ。当たったのはファビーニョとブルーノ・クアドロスぐらいじゃないですか。あと今年はボランチを固定できなかったのが致命的でしたね。前にはタレントが揃っているのに生かしきれてなかったのが残念です。
来年はいっそのこと育成も含めて若手中心で挑んではどうでしょう。いつまでもアキやモリシに頼るのはちょっとね。モリシも昔に比べて明らかに運動量落ちてきてますし。せっかくなんで長期的なプランでチーム作りをした方がいいのではと思います。僭越ながら。
なので今からストーブリーグが気になります。

しかばんび音響様
お久しぶりです。W杯を一緒に見て以来ですかね。お元気ですか?
最終戦に限っていえばそうですね。シジクレイがポンテに振り切られた時点で勝負あったと思います。もともとジジクレイはストッパーの適正が微妙なので。今までだましだましやってきたところが土壇場で綻んだというのが僕の感想です。宮本については…、そういうやつなんですよ。まあガンバというチーム自体まだまだ精神的に弱いので。でないとFC東京戦の逆転負けとかありえないっす。なので来年は精神的支柱になりうるような闘将系のベテラン選手(かつてのドゥンガような)を補強するって手もありますが。今のJリーグにいるかどうか。まあ強さと脆さを兼ね備えているのがガンバのチームカラーといったらチームカラーですからね。



ガンバ三位、浦和レッズ優勝

やっぱりな。今のレッズ相手に三点差以上で勝つなんて至難の業だと思っていた。しかもアウウェーで。まああれだけのメンツを揃えていたら優勝以外ないと思うけど。
ガンバはどこで歯車が狂ったのか。アラウージョと大黒が抜けたとはいえマグノと播戸が1年目ということをふまえれば期待以上の活躍を見せたし、長年の懸案だった右サイドには加地という補強は的確だったと思う。システムも3バックと4バックを状況によって使い分けるなどチームとしての柔軟性は昨年以上に高かった。
敗因を挙げるならやはり後半戦に怪我人が続出したことか。遠藤と播戸の離脱は痛かった。フェルナンジーニョも今年はぱっとしなかったし。浦和も怪我人が多かったけど選手層がガンバよりも厚いのでそれほど失速しなかったように思う。
あとはセンターバック。シジクレイ、宮本、山口、この三人俺は好きだけど(はらはらドキドキ感が)、堀ノ内、闘莉王、坪井の三人の方が人に強く見ていて憎たらしいくらい安定していた。チームスタイルの違いもあると思うけど、来年補強するならセンターバックかな。
とりあえず岡本さんおめでとう。田中は今年ぱっとしなかったけどね。
あと2位の川崎がアジアチャンピオンズリーグ出場って、せめて引き分けたかった…。

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